万が一の交通事故にあってしまい、幸い自動車保険に加入していた場合、基本的には加入した保険会社の「損害担当者」と相手が加入している「損害担当者」とで交渉していくことになります。その中で、「自損自弁」という言葉が出てくることがあります。
いま、交通事故の渦中にある方も、また過去にそういう経験があり、結局「自損自弁」ってなんだったの?という方も、この記事で少しだけでもご理解が進めば幸いです。
自損自弁(もちわかれ)とは?
こんにちは。当ブログにご訪問頂きありがとうございます。
今回は交通事故における「自損自弁」という言葉について、よくわからない!どういうことなの?というご質問があったため、記事にしておきます。
自損自弁とは「当該物損交通事故につき、相手に損害額を請求せずにお互いの損害額をお互いで負担する」ということです。
自損自弁=過失割合50:50
ではない、ということですので、ここのところを錯覚しないよう注意が必要です。
過失割合が50:50位だろうから、「お互い様ですね。ではもう自分の車は自分でなおしましょう。それではさようなら」ではありません。
過失割合と損害額
例えば、信号のない交差点で出合い頭の接触事故にあってしまった、とします。
細かい条件等は省き、過失割合が50:50でした。
こちら側(Ⓐ氏)が運転していた自動車は大きな高級セダン(Ⓐ車)でした。お相手(Ⓑ氏)の自動車は国産の軽自動車(Ⓑ車)でした。(車種はあくまでも例えです。他意はありません。)
ここでそれぞれの修理代(損害額)と負担額を考えてみます。
ケース① Ⓐ車の損傷が軽微でⒷ車の損傷が大きい場合
※いずれのケースも過失割合は50:50だとします。
※いずれのケースも損害額の合計(Ⓐ車Ⓑ車合計)は60万円とします。
Ⓐ車損害額10万円、Ⓑ車損害額50万円だとすると、
Ⓐ氏がⒷ氏に対して支払う賠償額は
50万円×50%=25万円
Ⓑ氏がⒶ氏に対して支払う賠償額は
10万円×50%=5万円
となります。
ケース② Ⓐ車の損傷が大きくⒷ車の損傷が軽微の場合
Ⓐ車損害額45万円、Ⓑ車損害額15万円だとすると、
Ⓐ氏がⒷ氏に対して支払う賠償額は
15万円×50%=7.5万円
Ⓑ氏がⒶ氏に対して支払う賠償額は
45万円×50%=22.5万円
となります。
ケース③ Ⓐ車・Ⓑ車同等の損害の場合
Ⓐ車損害額30万円、Ⓑ車損害額30万円だとすると、
Ⓐ氏がⒷ氏に対して支払う賠償額は
30万円×50%=15万円
Ⓑ氏がⒶ氏に対して支払う賠償額は
30万円×50%=15万円
となります。
自損自弁でも妥当なケースとは
見ていただいた通り、同じ過失割合50:50であっても、相手への賠償額と自身が受け取る賠償額は全然違っていたかと思います。
では、どのようなケースで自損自弁が成立するでしょうか。
それぞれのケースでの賠償額を比較してみましょう。
ケース①
支払う額7.5万円>受け取る額22.5万円
自車損害額10万円-5万円(相手から受け取る賠償額)+25万円(相手への賠償額)
=30万円(実際の負担額)
ケース②
支払う額25万円<受け取る額5万円
自車損害額45万円-22.5万円(相手から受け取る賠償額)+7.5万円(相手への賠償額)
=30万円(実際の負担額)
ケース③
支払う額15万円=受け取る額15万円
自車損害額30万円-15万円(相手から受け取る賠償額)+15万円(相手への賠償額)
=30万円(実際の負担額)
どのケースでも合計の損害額が60万円なので、実際の自己負担額は同じですが、自車の修理代と比較してみた場合、どうでしょうか。お互いがお互いの損害額を負担する「自損自弁」がふさわしいのはどのケースでしょうか。
自損自弁で解決を図るのは、基本的には実際の負担額と自車の損害額がイコールになる、ケース③の場合、だと考えます。
ケース②のような場合でも、お相手から自損自弁を申し入れてくる時があります。その場合の判断はそれぞれお任せいたしますが、逆に、ケース①のような状況(実際の負担額が自車の損害額を上回るケース)でお相手が執拗に自損自弁を申し入れてくる場合は、応じるべきではありません(私個人の見解です)。
まとめ
いかがでしょうか。50:50の過失割合だからお互い様でいきましょう、という考え方が、その時のお互いの損害額によってはお互い様とは言えないようなケースも出てくる、というのがお分かりいただけたのではないかと思います。もちろん、「交通事故はお互い様だから、お互い気を付けましょう!」という考え方を否定するわけではありません。
あくまでも「金銭面で見た場合、まったく50:50に感じられないことがあります。」というお話でした。
今回は以上です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。